医療部長 井上 久
AS診で、よく訊かれる質問に「ASにはどんな食べ物がいいんですか?」
「食べてはいけないものはありますか?」
「骨が出来る病気だからカルシウムは摂らない方がいいんじゃないでか?」
があります。
ASの痛みを軽減させるとか、病勢を抑えて靱帯骨化・強直を
抑制したというエビデンスのある食べ物やサプリメント、
さらには薬さえも、未だありません。
簡単に言えば、「バランスの取れた食事を摂る」ということになりますが、
それでもASを含むリウマチ性疾患には、前述のようにエビデンスは
ないものの“お薦め”の食べ物があります。ASとRA(関節リウマチ)は
厳密には異なるものの共通の部分も多々ありますので、
日本女子大学・保健管理センターの佐藤和人教授の「関節リウマチと栄養」
(臨床栄養 Vol.108, No.4, 2006)を参考にして、簡単に述べたいと思います。
ただし、過大な期待を持たず、また、何事も“過ぎたるは及ばざるが如し”
を肝に銘じて(摂りすぎは禁物)、“多めに摂る”程度のニュアンスで。
- 炎症惹起物の産生を低下させて炎症を抑制させる多価不飽和脂肪酸、
すなわちαリノレイン酸、EPA、DHAを多く摂る。
逆に、炎症惹起物質の原料となる不飽和脂肪酸の多い肉類の摂り過ぎに注意。
- αリノレイン酸を多く含む物…しそ油、えごま油、亜麻仁蕪などの食用油
(酸化され易いので、なるべく加熱せず、また古くなった物は避ける)
- DHA&EPAを多く含む物…うなぎ、ほんまぐろ、まだい、さば、ぶり、さんま、
はまち、きんき、さわら、まいわし、にじます、あじ、はたはた、さけ(しろさけ)、
こはだ…などの魚類(いわゆる青背の魚)
- 1.は酸化され易いので、抗酸化作用をもつβカロチンやビタミンC、ビタミンE、
セレンを含む食物を一緒に摂る。
- βカロチンを多く含む物…緑黄色野菜
- ビタミンCを多く含む物…アセロラ、グァバ、柿、キウイフルーツ、
いちご…などの果実類、赤・青・黄ピーマン、芽キャベツ、菜の花、ブロッコリー、
なずな、カリフラワー、にがうり、高菜などの野菜類
- ビタミンEを多く含む物…アーモンド、ヘーゼルナッツ、落花生などの種実類、
にじます、うなぎ、あゆ、はまち、アンコウなどの魚類、かぼちゃ、モロヘイヤ
などの野菜類、アボガドなどの果実類
- セレンを多く含む物…いわし、わかさぎ、かれい、ほたてなどの魚介類、
ねぎなどの野菜類
- リウマチ性疾患は貧血を合併し易いので、赤血球を作るのに大切な葉酸、
ビタミンB群(特にB6とB12)、鉄を摂る。
- 葉酸を多く含む物…ほうれん草、ブロッコリー、キャベツ、春菊などの野菜類、
納豆、ゆで大豆などの豆類、みかん、柿、バナナなどの果実類、牛・豚・鳥レバー
などの肉類
- ビタミンB6を多く含む物…かつお、うるめいわし、めじまぐろ、みなみまぐろ、
かたくちいわし、さんま、きはだまぐろ、さけ(しろさけ)、びんながまぐろ、
ほんまぐろ、ひらまきなどの魚類
- ビタミンB12を多く含む物…しじみ、あか貝、あさり、ほっき貝、牡蠣、
かつお、さんまなどの魚介類
- 鉄を多く含む物…あさり、しじみ、ほや、どじょう、あか貝、ほっき貝などの
魚介類、豚・鳥レバーなどの肉類、のり、干しひじきなどの藻類、豆乳、生揚げ、
がんもどき、納豆などの豆類
- リウマチ性疾患では骨粗鬆症になり易いので、カルシウム、ビタミンD、
ビタミンKを摂る。
- カルシウムを多く含む物…干しえび、どじょう、うるめいわし、
むろあじ(くさや)、わかさぎ、かたくちいわしなどの魚類、
ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、加工乳、生乳、ヨーグルトなどの乳類、
京菜、モロヘイヤ、小松菜などの野菜類
(カルシウムは過剰に摂っても尿・便から排泄されて調整されるので、
ASの靱帯骨化が増強されることはない。ただし、欠乏して血中濃度が下がると、
これを補おうとして骨からどんどん血中に溶け出して骨粗鬆症を
助長することになるので、“ほどほど”か若干多めが良い(800mg〜1,000mg/日程度))。
- ビタミンDを多く含む物…くろかじき、あんこう(きも)、にしん、まいわし、
かわはぎ、べにざけ、さけ(しろさけ)、そうだがつお、にしん、かつお、
さんま、うなぎなどの魚類、きくらげなどの茸類
- ビタミンKを多く含む物…緑黄色野菜、納豆、乳製品、卵、肉類
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